小規模なスタートアップであれ、大企業であれ、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の影響を免れた企業はない。この世界的な危機により各業界がほぼ活動停止状態となり、さまざまな規模の会社が適応と進化を余儀なくされた。
一つ希望の兆しがあるとすれば、それは企業が従業員や顧客の生活を楽にし、改善するテクノロジーの導入を強いられていることだ。想像してみてほしい。自分の会社に商品販売の場所がなくなったら、会社は生き残れるだろうか? 多くの企業は自らにこの問いを投げ掛けており、その答えは「ノー」だ。
テクノロジーは、デジタル化が進む未来への備えがない企業を強力にサポートするものとなるが、企業で今起きている変化の全てテクノロジーに依存しているわけではない。多くの企業は革新的な方向転換をし、新たな市場へと繰り出した。こうした大企業は閉鎖や休業をせず、生き延びて競争力を維持するために大きな変革を実施した。
以下に、新型コロナウイルスが企業にもたらした10の大きな変化を紹介する。
1. 旅客機が貨物便に
旅客機の利用が過去最大級の落ち込みを見せる中、航空会社の中には定期便を最大90%削減したところもある。しかし、ヴァージン・アトランティック航空やルフトハンザ航空、ユナイテッド航空、アメリカン航空などの大手は、乗客輸送から貨物輸送に切り替え、空いた客室スペースを使って特に需要が高い食料品や医療用品などの物資を運んでいる。
2. スーパーが配送施設に
米スーパーマーケット大手の一部は、顧客により良いサービスを提供し従業員を守るため、客の入店を禁止して店舗を配送施設に変えている。ホールフーズはロサンゼルスとニューヨークの店舗を変容させたし、クローガーとジャイアント・イーグルも複数の店舗で同様の措置を取った。これにより、客から遠い場所の配送センターを使うよりもはるかに迅速に持ち帰りや配送の注文に対応できる。
3. ホテルが在宅勤務者向けに日中料金を提供
ホテルは今ほぼ空室となっており、在宅勤務者の多くがスペース不足に悩んでいる。この2つの問題への解決策として、ホテルチェーンのレッド・ルーフ(Red Roof)は遠隔勤務者向けに日中利用料金での部屋提供を始めた。遠隔勤務者は1日29ドル(約3100円)からで一部のホテルの部屋を自分専用オフィスとして使え、高速インターネットを備えた静かな環境の中で仕事ができる。
4. レストランがスーパーに
今は、スーパーに行くというシンプルなことでさえ難しくなっている。生鮮食品の入手経路を持ち、収入源を必要としているパネラ(Panera)やカリフォルニア・ピザ・キッチン(California Pizza Kitchen)、サブウェイなどの多くのレストランチェーンは、生鮮食品の販売を始めている。
顧客はレストランのメニューをオーダーすると同時に、生の野菜や肉、卵、さらにはビールなどの食料品を注文して持ち帰ることができる。客は必要な食料品を確実に手に入れられるし、レストランにとっては貴重な収入源となる。
5. 必需サービス従事者がおもちゃに
新型コロナウイルスの流行により、新たなタイプのスーパーヒーローが誕生した。それは、生活に必要不可欠なサービスを提供する労働者たちだ。米玩具メーカーのマテルは最近、デリバリーの運転手やスーパーの店員、医療従事者をモデルとした新しいフィッシャープライス・アクションフィギュアのシリーズを発表した。
6. パタゴニアが保存食販売を拡大
米アウトドア服販売大手パタゴニアが手掛ける保存食ブランド「パタゴニア・プロビジョンズ」は、アウトドアでの栄養補給のために開発されている。だが同社は最近、同ブランドを拡大し、他社製の保存食を販売するオンラインショップを立ち上げた。ショップではココナッツオイルやコーヒーなどの保存食を提供し、世界の食品サプライチェーンの維持を目指している。
7. GMの自動運転車が食品を配送
ゼネラルモーターズの自動運転車部門であるクルーズ(Cruise)は最近、休止状態だった自動運転車を使い、サンフランシスコの2つのフードバンクの食品配送を始めた。現在、自動運転車は必需サービスとはみなされておらず、運用が認められていない。だが、こうした団体を支援することで、フードバンクの従業員を他のサービスに振り分けられ、クルーズの車は走行許可が得られる。
8. 店舗前での商品受け渡し
多くの店で客の入店が禁止される中、各企業はネットや電話で注文を受けた品を店舗前で受け渡しするようになった。DSWやディックス・スポーティング・グッズ(Dick’s Sporting Goods)、マイケルズ、ベスト・バイなどの小売業者は直ちに、従業員が客と全く接触せずに商品を渡せる店舗外の受け取り場所を開設した。店舗前での受け渡しの仕組みを作ることで、従業員には仕事ができ、顧客は必要なものを手に入れられる。
9. 店舗がネット注文を拡大
多くの店やレストランがテック系企業と提携し、携帯電話からの注文を受け付けるようになっている。米ピザチェーンのパパ・ジョンズはフェイスブックを使った即時注文サービスを提供。ウォルグリーンズは、食品配送企業ポストメーツ(Postmates)と提携し、さまざまな食料品と日用品を提供している。こうした協業により、企業はより迅速・効率的にサービスを提供できるようになっている。
10. フィットネスがオンライン化
ジムやフィットネス企業は実店舗が閉まっているため、工夫を凝らしたサービスを提供している。オレンジ・セオリー(Orange Theory)やプラネット・フィットネス(Planet Fitness)、24アワーフィットネス(24 Hour Fitness)などは、エクササイズのレッスンをライブ配信しているほか、自宅でできる運動メニューも公開している。
トレーニングウエア企業のアンダーアーマーは、人々が運動を継続できるよう、30日間のフィットネスキャンペーン「ヘルシー・アット・ホーム(Healthy at Home)」を展開した。人々が家で運動をする中、テクノロジーがジムと顧客とをつなげている。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により世界各地の企業が事業運営の形を変えた。大きな変革を進め、方向性を転換することは、多くの企業が生き延びる唯一の道となるかもしれない。