2021/10/02【新型コロナウイルス:COVID-19】母乳から新型コロナ抗体 感染後10カ月の母親から見つかる /アメリカ
病院や、新たに子どもを持つ親らにはここ1年半、自分たちや新生児を新型コロナウイルス感染症から守るために急激な適応が強いられてきた。
新生児や幼い子どもたちは、より年配の既往歴がある人のように深刻な症状を抱える危険性があるとは考えられていない。それでも医師らは遠隔医療サービスの活用を増やし、親たちが必要な支援を安全に受けられるようにしてきた。
しかし新たな調査からは、母乳で育つ乳児はまたそれとは異なる方法で守られている可能性が示唆された。
最近の調査によると、新型コロナウイルス感染症になった人の母乳には最大10カ月間、ウイルスを中和する抗体が含まれている可能性がある。この期間にこうした母乳を与えれば、乳児にも保護効果があるかもしれない。
同研究は、米ニューヨーク・マウントサイナイ病院のレベッカ・パウエル博士が率いたものだ。パウエル博士のチームは、新型コロナウイルス感染症から回復した75人の母親の母乳を集めて分析。その結果、サンプルの88%に新型コロナウイルスを中和させる能力を持つ抗体が含まれていた。
英紙ガーディアンによると、発見された主な抗体は分泌型免疫グロブリンA(IgA)で、乳児の気道や腸管の内膜に張り付きウイルスや細菌の体内への侵入を防ぐことができるものだ。
パウエル博士は9月21日、この研究結果を世界授乳・泌乳シンポジウム(Global Breastfeeding and Lactation Symposium)で発表した。
パウエル博士はガーディアン紙に対し「これは授乳している人たちだ。そのため母乳の中に抗体があるか、感染からどれほどの期間保護できるか、子どもに最も強力な抗体保護を与えられるのはどのワクチンかは非常に重要な情報で、今後長い間価値を持つだろう」と述べ、「これは、授乳を続ければ母乳を通して抗体を与えられることを意味している」と続けた。
抗体は、ウイルスや感染を経験した後かワクチン接種後に作られる。今回の調査に参加した全ての母親は新型コロナウイルス感染症に感染し、子どもに母乳を通して与えるための抗体を体内に持っていた。しかしパウエル博士のチームは、ワクチンによる抗体の伝達が赤ちゃんに与え得る影響を調査したいと考えた。
チームはモデルナ、ファイザー、ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンを接種した50人の母親から母乳のサンプルを集めた。その結果、ファイザーのワクチンを接種した人の87%とモデルナのワクチンを接種した人の100%が、母乳内に新型コロナウイルス感染症のIgG抗体を持っていることが分かった。ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンを接種した人のうち、母乳内にIgG抗体があった人は38%だった。
■母から子への抗体の受け継ぎ 研究は他にも
新型コロナウイルス感染症の抗体がどのように母親から新生児に受け継がれ得るかを明らかにする調査は、今回が初めてではない。
「米国産婦人科ジャーナル―母体胎児医学(American Journal of Obstetrics & Gynecology MFM)」に9月に発表された小規模調査は、ファイザーかモデルナのワクチンを受けた母親を持つ36人の新生児を調査した。その結果、乳児は出生後、全員が保護のための抗体を持っていた。
またフロリダ大学の研究者らは、ワクチンを接種した母親の母乳には新生児を守る可能性がある抗体が含まれていたことを発見した。
この研究の共同執筆者であるジョゼフ・ノイ博士は「多くの母親や妊娠中の女性がワクチンを接種することを恐れている。こうした女性たちは、子どものため最善のことをしたいと思っている」と述べ、「私たちが知りたかったのはこの点で、実際にメリットがあるのかどうかだ」と続けた。
パウエル博士は、この発見が大きな影響を与えるのは親と新生児に限らないと強調した。マウントサイナイ病院の研究者らは、新型コロナウイルス感染症の深刻な症状に苦しむ大人のための治療の一環として、この抗体を活用できる可能性があると示唆した。
https://news.yahoo.co.jp/…/99ea8402696b990155be4b3ffcab…