「食中毒」や「火災」は他人事ではないトラブル
飲食店で起こりうるトラブルと聞いて多くの人が思い浮かべるであろう「食中毒」。東京都福祉保健局の「食中毒発生状況」によると、平成27年度に報告された食中毒の発生件数は東京都内で150件。そのうち飲食店で発生した食中毒は130件を数え、このことを踏まえると決して他人事ではないといえる(飲食店以外は集団給食等)。
食中毒以外にも、糸魚川市大規模火災の原因ともなった鍋の空焚きによる「火災」、従業員の不注意によるお客様への「ケガ」など飲食店が経験するかもしれないトラブルは意外と多い。そこで今回は、こういった飲食店のトラブル対策に有用な「飲食店向け保険サービス」について紹介する。
トラブルに対応できる保険の種類
保険と聞くと、生命保険や火災保険などを思い浮かべるという人も多いだろうが、飲食店が入る保険の中にはあまり耳にしないものも多い。飲食店経営者が知っておきたい保険にはどんなものがあるのか少し見ていこう。
■ 生産物賠償責任保険
通称PL保険と呼ばれる保険で、業務中に発生したケガなどに適用される。食中毒が起こった場合もその対象となる。
■ 施設賠償保険
店舗内でのケガや事故に対する損害補償をしてくれるほか、配達時の事故なども補償してくれる保険。
■ 店舗休業保険
落雷といった自然災害や火災、盗難などにより営業ができなくなった場合に適用される保険。休業中に発生したであろう利益を補償する。
■ 火災保険
火災が発生したときに適用される保険だが、被保険者の重大な過失があった場合は適用されないということもある。
■ 地震保険
火災保険ではカバーできない、地震による損害補償。
■ 個人情報漏えい保険
外部からの不正アクセスなどにより個人情報が漏えいした場合に適用される保険。保険会社によっては、法人情報の漏えいによる損害を補償する保険もある。
飲食店向けの保険商品4つ
飲食店向け保険サービスを提供している保険会社はいくつもある。さまざまな保険商品を検索していて迷ってしまうという人も少なくないだろう。そこで、ここでは4つの保険会社と保険商品をピックアップしたので参考にしてほしい。
■ 三井住友海上
日本食品衛生協会に加入する会員向けに「あんしんフード君」という共済保険を提供。食中毒や異物混入などの事故から、クロークで預かった衣類の汚損などにも対応。保険料が比較的安く、個人店でも利用しやすいのが特徴。
■ 損保ジャパン日本興亜
「商賠繁盛」という名前で飲食店向けの保険商品を販売。食中毒の発生や、設備不良を起因としたお客様の怪我などに対応。被害者への賠償金や訴訟費用なども補償する。
■ 東京海上日動
施設賠償責任保険、生産物賠償責任保険、個人情報漏えい保険といった飲食店向けの保険プランが充実している。なかでも「超ビジネス保険」は、休業損失や労災事故など複数の補償をまとめて一つの保険でカバーしてくれる保険。
■ あいおいニッセイ同和損保
「タフビズ・賠償総合保険」は、施設・設備管理、出前などの業務遂行中のケガや事故、販売物によって引き起こされた食中毒などを補償してくれる保険。食品衛生監視票の採点に応じて割引をしてくれるサービスもある。
保険に入るメリット・デメリット
保険に入るメリットは、なんといってもトラブル時の損害を最小限に食い止められるという点である。食中毒や火災というのは、いくら注意していても、万が一の可能性は残ってしまうもの。保険に入っておくことで、トラブルに遭遇した場合も落ち着いて対処することができるだろう。
一方、デメリットとして考えられるのは、費用面の問題。保険に入る分、それだけ出費がかさむというのは避けられない事実であるが、トラブル時のことを考えると保険加入しておくにこしたことはない。まずは自店舗にかかるリスクを洗いだし、保険に加入する必要性があるかどうかを慎重に判断する必要がありそうだ。
保険への加入は安心感を得られるが、それにかまけて安全対策を怠っては意味がない。なによりトラブルを起こさないことが大切であることを心に留め、しっかりとした対策を講じていきたいものだ。
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