2022/02/01【新型コロナウイルス:COVID-19】特許権が放棄された新型コロナワクチン「CORBEVAX」が、コロナ禍の世界を変える
──世界のワクチン格差はますます深刻な課題となってきている
世界で新型コロナウイルスワクチンを1回以上接種した人は48億人を超え、世界人口の約62.5%を占めている。しかし、接種率が8割近くにのぼる高中所得国とわずか1割にとどまっている低所得国とのワクチン格差はますます深刻な課題となってきた。
■ 組換えタンパク質をベースとした従来技術を使った「CORBEVAX」
米ベイラー医科大学付属テキサス小児病院の研究チームは、組換えタンパク質をベースとした従来技術を用い、「世界の新型コロナウイルスワクチン」を標榜する新たなタンパク質サブユニットワクチン「CORBEVAX」を開発した。
「CORBEVAX」は、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の無害な部分を使って免疫系を刺激し、新型コロナウイルスに遭遇したときに備える仕組みだ。スパイクタンパク質の「設計図」を与えるファイザーやモデルナのメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンに対して、「CORBEVAX」はスパイクタンパク質を体内に届ける。
同様の技術は1980年代にB型肝炎ワクチンで用いられ、米バイオ医薬品企業ノババックスの新型コロナウイルスワクチンでも採用されている。
■ 従来株の発症を90%以上予防
インドで18~80歳の3000人以上を対象に実施した第3相試験ではその安全性と忍容性、免疫原性が確認された。従来株の発症を90%以上予防し、デルタ株の発症を80%以上予防する。また、2回接種から6カ月経過後も血清中和抗体価の幾何平均値(GMT)の減少は30%未満で、免疫応答を高く持続していた。なお、オミクロン株への効果については調査中だ。
研究チームは、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の流行時に、SARSウイルスのスパイクタンパク質の一部の遺伝情報を酵母に挿入してスパイクタンパク質を大量に産生させるSARSワクチンを開発していた。SARSの流行が短期間で終息したため、このワクチンは使用されなかったが、このワクチンをベースとし、スパイクタンパク質を新型コロナウイルスに更新して「CORBEVAX」が開発された。
■ 特許権が放棄された「CORBEVAX」
「CORBEVAX」は世界の人々が広く新型コロナウイルスワクチンの接種機会を得られるよう、その特許権が放棄されている。インドでは、2021年12月28日に医薬品管理局(DCGI)が「CORBEVAX」の緊急使用を許可し、インドの製薬会社バイオロジカルEが2022年2月以降、毎月1億回分を生産する計画だ。3億回分の供給をインド政府と約束しているほか、さらに10億回分以上を国外にも供給していく。
「CORBEVAX」は、十分に確立された組換えDNA技術を用いて容易に比較的低コストで生産できるため規模を拡大しやすいという点で、mRNAワクチンよりも優位性がある。「CORBEVAX」の生産に適した施設はすでにあり、mRNAワクチンのように超低温で保管する必要がなく、通常の冷蔵庫で保存できるため輸送や管理がしやすいのも利点だ。大量に生産し、世界各国へより速く簡単に供給できることから、ワクチン格差を解消する手段のひとつとして期待されている。