2020/06/17【新型コロナウイルス:COVID-19】スパコン富岳 飛まつ予測新動画

最新のスーパーコンピューターを使って新型コロナウイルスの患者が病室でせきをした場合などの飛まつの広がり方をシミュレーションした動画を、神戸市の理化学研究所が新たに発表しました。
神戸市の理化学研究所の坪倉誠チームリーダーなどのグループは、最新のスパコン「富岳」を使ってせきなどによる飛まつが室内でどう広がるのかシミュレーションしていて、17日、新しい動画を発表しました。
このうち、エアコンを切った病室であおむけになった患者4人が同時にせきをしたという想定では、小さな飛まつが天井に達したあと、仕切りのカーテンのすきまから部屋中に広がりました。
エアコンをつけて窓を開けていれば、広がった飛まつは早い時間で薄まることが分かり、院内感染を防ぐためには換気の徹底が効果的だと分析しています。
また、机をはさんで4人が対面しているという想定では、マスクをつけずにせきをした場合、正面にいる人に飛まつがかかる一方、隣や斜め前にいる人にはほとんど飛んでいかないことが分かったということです。
さらに、湿度が高い場合は低い場合に比べて飛まつが蒸発せず、机の上に残りやすいことが分かり、接触感染のリスクが高まるとしています。
坪倉チームリーダーは「窓を開けて換気するなど身近にできる対策から建物の設備の改善まで、感染予防策の提言につなげたい」と話していました。

【発表された新たな動画】

理化学研究所の研究グループが17日、新たに発表したシミュレーション動画は合わせて4種類あります。

〈オフィス4人〉

このうち机をはさんで4人が対面した動画は、マスクをつけずにせきをしたケースと、大きな声で話をしたケースをシミュレーションしています。
いずれの場合も飛まつの距離は2メートルほどとなり、正面の人にかかります。
一方、隣や斜め前の人には、ほとんどかからないことも分かりました。
研究グループは、感染予防に有効な座席の配置を検討する参考にしてほしいとしています。
さらに、同じ状況で湿度が高い場合と低い場合の比較も行いました。
湿度が90%の場合、30%の場合と比べて飛まつが蒸発しにくく、机の上に残りやすいことが分かり、接触感染のリスクが高まるとしています。

〈オフィス18人〉

18人が座る比較的規模の小さいオフィスで片方だけ窓を開けた場合を想定した動画では、外との温度差によって空気に流れができて、換気が進む様子を可視化しています。
エアコンをかけて外との温度差を作ることが換気をするうえで重要だとしています。

〈病室〉

エアコンを切った病室であおむけになった患者4人が同時にせきをしたケースを想定した動画では、小さな飛まつが天井に達したあと仕切りのカーテンのすきまから部屋中に広がりました。
エアコンをつけて窓を開けていれば、広がった飛まつは早い時間で薄まることが分かり、院内感染を防ぐためには換気の徹底が効果的だと分析しています。

〈列車〉

時速80キロで走行する電車内を想定した動画では、乗車率や窓の開閉によって空気が入れ代わる量がどの程度、変わるか比べています。
電車の外から入ってきた空気を青色で示し、車内にあった空気を赤色で示しています。
その結果、車内が混雑していなければ、窓を閉めて走行していても換気の効果は通常のオフィスのおよそ3倍になることが分かりました。
一方、満員電車の場合、空気の流れにむらができるため場所によっては十分に換気ができないということです。
このほかグループでは学校の教室内の飛まつの広がり方を調べていて近く、結果を発表することにしています。
これらの動画は、近く、理化学研究所のホームページなどで公開されることになっています。
【富岳とは】
スパコン「京」の後継機として開発された富岳は、神戸市中央区にある理化学研究所の「計算科学研究センター」内に今月13日までに設置されました。
広さ3000平方メートルの専用の室内には、幅80センチ、奥行き1メートル40センチ、高さ2メートル20センチの計算機合わせて432台が整然と並び、富岳はこれらを組み合わせて構成されています。
計算機の化粧パネルは、従来の「京」が赤色だったのに対し、富岳は富士山をイメージして青色があしらわれています。
理研によりますと、富岳は一時、世界最速を誇った京の、3倍以下の電力の消費量で100倍の計算能力を持つということです。
今月22日には、世界のスパコンの性能を評価するランキングが国際学会で発表される予定で、富岳も上位に入ることが期待されています。
理化学研究所計算科学研究センターの松岡聡センター長は「これまでのスパコンの中でも最大規模で世界最高の性能を持っている。富士山のように高い頂を目指しつつ、活用のすそ野も広げたい」と話していました。
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