2022/03/26【新型コロナウイルス:COVID-19】相次ぐ変異株の出現、医療提供体制は逼迫…暮らし翻弄された2年、今なお収束見えず /鹿児島
新型コロナウイルスは次々に変異し、度重なる流行をもたらしてきた。この2年、鹿児島県内で感染は大きく広がり、多くの犠牲者が出た。医療現場をはじめ、経済や雇用、教育とさまざまな分野に影響を与え、県民の暮らしは翻弄(ほんろう)された。今なお収束は見えず、感染防止対策と社会経済活動の両立を模索する状況は続く。
変異株の相次ぐ出現で、県内は感染が急拡大し、感染者の累計は4万人を超えた。昨春の第4波は、英国由来の「アルファ株」がまん延。収束後の夏はインド由来の「デルタ株」が猛威を振るい、第5波に見舞われた。
デルタ株は感染力が強い上、重症化しやすい特徴があった。1日当たりの新規感染者数は最大251人に上り、8~9月の死者は26人に。ワクチン接種が進んだ高齢者の感染は減り、10~50代の若年から中年層の割合が高まった。
今年に入り、第6波をもたらしたのが南アフリカで報告された「オミクロン株」だ。デルタ株より重症化しにくいものの、感染力や免疫を逃れる力が強く、新規感染者数は1日当たり最大744人に達した。これまであまり目立たなかった10歳未満の割合が急増。幅広い年代でかつてない規模の感染者が発生し、高齢者を中心に死者数を一気に押し上げた。1月以降の死者は100人に上る。
感染者は減りきらないまま、3月18日にオミクロン株の派生型のBA・2感染が確認された。感染力はさらに強いとされ、予断を許さない。
大流行となった第5波、第6波では県独自の緊急事態宣言が発令され、まん延防止等重点措置の適用を受けた。外出自粛や飲食店などに対する営業時間短縮の要請が繰り返された。
■通常診療に大きな影響
県内の医療提供体制は、感染拡大の波が到来するたびに逼迫(ひっぱく)する状況が繰り返された。感染拡大の主な要因がクラスター(感染者集団)だった初期段階に比べ、1月以後の第6波では特に、感染経路不明者が多数を占める“市中でのまん延状態”が加速。医療従事者の感染も急増し、通常診療に大きな影響を与えた。
アルファ株が主流だった21年5月をピークとする第4波で初めて病床使用率が5割を超えた。続く8月を中心としたデルタ株による第5波では、26日に過去最高となる76.6%を記録。医療機関は病床を急拡大するなど対応に追われ、通常診療との両立に苦心した。
オミクロン株による第6波は、主な感染の場が飲食店から学校・家庭などへ移り、医療従事者の濃厚接触者や感染者が増えた。受け入れる感染者の増加という外的要因と、感染拡大による院内の人員不足という内的要因が重なり、診療制限する医療機関が相次いだ。
県は、入院または宿泊療養施設入所を原則としていたが、感染拡大のスピードに施設開所が追いつかず、入所できずに自宅待機となる軽症・無症状者が大幅に増加。第5波で初めて千人を突破し、第6波では4000人台に達した。
3月24日現在、病床使用率は28.8%と2月18日の59.8%をピークに緩やかに減少している。ただ年度末の移動期で人流は活発になり、新たな感染拡大の波が到来する可能性が懸念される。
■休校、時差・分散登校、オンライン授業…
鹿児島県内の教育現場は休校や時差・分散登校、行事の中止・延期など大きな影響を受けた。デジタル端末を使う環境整備も少しずつ進み、学びの保障に役立てる例が広がった。
2020年3月、全国で一斉休校になり、県内の学校では年度末の行事の中止が相次いだ。新学年スタート後も、大型連休を前に再び休校に。働く親が頼みとする放課後児童クラブは、限られた人数のスタッフのやりくりや、3密対策に追われた。
21年夏に感染が急拡大し、2学期は鹿児島市と霧島市の小中学校などで時差・分散登校が始まった。文部科学省の「GIGAスクール構想」により小中学生に1人1台配布された端末を学びに生かす動きが加速。出席できない児童生徒向けのオンライン授業や、家庭学習課題の配布といった試みがみられた。
今年1月末時点の文科省調査で端末持ち帰りが「準備済み」は、県内公立小中学校など741校中612校(82.6%)。全国平均(95.2%)を12.6ポイント下回ったが、県教育委員会によると、未了の市町村も21年度中に準備が終わる見込み。
■観光・交通の苦境長引く
相次ぐ緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の適用で、県境をまたぐ往来や外食等の行動制限要請が繰り返された。業種によって業績回復にばらつきがあり、中でも観光や交通関連産業は苦境が長期化している。
県内の宿泊者数は、2020年が前年比38.7%減の512万人。コロナ禍2年目の21年も前年割れの510万人(速報値)にとどまった。需要喚起策として国のGoToトラベルや県民向け旅行割引が実施されたが、感染拡大のたびに停止され、事業者はキャンセル対応に追われた。
路線バスや離島航路は減収が続き、減便や値上げが相次ぐ。「第6波」では、感染者と濃厚接触者の欠勤による減便・欠航も起きた。感染防止と経済活動の両立、観光・交通のインフラ維持が課題となっている。
県内の有効求人倍率は、2022年1月現在で1.33倍。慢性的な人手不足を背景に、コロナ下でも69カ月連続で1倍台を維持している。「第2波」とされる2020年7月に1.07倍と最も落ち込んだものの、以降は持ち直している。
鹿児島労働局は「鹿児島は家計を補助する立場で仕事を求める人が多い。感染リスクを考え、無理をせず求職活動を手控えたのでは。一方、企業側はコロナ収束後を見据えて採用を進めている」と分析している。