2022/04/30【新型コロナウイルス:COVID-19】飲食店はコロナ対策として「換気」の徹底を。国立感染症研究所がエアロゾル感染を認定
■感染研が新型コロナのエアロゾル感染を認定
国立感染症研究所(以下、感染研)が、新型コロナウイルスの感染経路に「エアロゾル感染」も含まれることを認定した。感染研のWebサイトでは以下のように説明されている。
「SARS-CoV-2は、感染者の鼻や口から放出される感染性ウイルスを含む粒子に、感受性者が曝露されることで感染する。その経路は主に3つあり、①空中に浮遊するウイルスを含むエアロゾルを吸い込むこと(エアロゾル感染)、②ウイルスを含む飛沫が口、鼻、目などの露出した粘膜に付着すること(飛沫感染)、③ウイルスを含む飛沫を直接触ったか、ウイルスが付着したものの表面を触った手指で露出した粘膜を触ること(接触感染)、である」
エアロゾル感染というと空気感染と混同しがちだが、その中身は少し違う。一般的に空気感染とは5μm(マイクロメートル)以下の粒子、いわゆる“飛沫核”を吸い込むことで感染する形態を指す。粒子が小さいため、空気中に漂い続け、広い範囲にウイルスが伝播する。一方、飛沫感染は5μm以上の粒子で感染する形態を指し、粒子が大きく数メートル以内で速やかに落下するため、感染者の周囲に気を配れば対策ができると考えられてきた。
エアロゾル感染はその中間にあるようなもので、粒子自体は5μm以上の大きさだが、その粒子が乾燥しているなどの原因で空気中に浮遊し続けることで感染する。空気感染ほどの伝播力はないが、飛沫感染とは異なった対策が必要になってくる。
感染研はこれまで、飛沫感染と接触感染が主な感染経路としていた。そのため国内の飲食店では、それに従った感染対策を行ってきた。例えば、多くの飲食店が導入したアクリル板の設置や、マスク会食・黙食のお願い。テーブルや椅子の消毒や、こまめな手指消毒など……。これらは飛沫感染および接触感染の対策である。
しかし上記に加え、エアロゾル感染も含まれると認定された今、これまでの対策では不十分だったことになる。
■エアロゾル感染の認定発表、なぜ今?
感染研が長らくエアロゾル感染を認めていなかったことについて、「国民に感染対策の不徹底や誤解を招いたのでは?」と感染研を疑問視する声があげられている。
感染研は、2022年1月に「エアロゾル感染は一部否定できない」としながらも、積極的には認めない見解を発表。世界的にはすでにエアロゾル感染が主要な感染経路だとにらみ、注意喚起を促していた。たとえば、世界保健機関(WHO)は2021年4月・12月の発表で、新型コロナウイルスのエアロゾル感染について明記し、注意喚起している。また米疾病対策センター(CDC)は、2021年5月、エアロゾル感染が感染経路の筆頭であると発表した。
明らかに世界の認識と逆行する感染研に対し、2022年2月、感染症や物理学の専門家たちが公開質問状を出す事態に発展した。
さらに2022年3月には、ホワイトハウス科学技術制作局長が、エアロゾル感染が最も一般的な感染経路だと見解を示した。アメリカでは今後、接触・飛沫感染より、エアロゾル感染対策に注力していくことになる。感染研がここにきて初めてエアロゾル感染を認定したのは、こうした背景があってのことだったのかもしれない。
■飲食店では「換気」が最も重要に
人が集まり食事をする飲食店では、これまで以上に、エアロゾル感染の対策が求められる。その対策として最も有効な方法は「換気」だ。
そもそもエアロゾル感染は、空気中に浮遊する感染性ウイルスを含んだ微粒子を吸い込むことでの感染を意味する。小さく乾燥した粒子(エアロゾル)は、長いもので数時間も浮遊し続ける。感染者のくしゃみや会話はもちろん、呼吸でも粒子は放たれ、店中に漂っている可能性がある。
そこで特に注意したいのが店内の空気の流れや循環だ。エアロゾル感染の対策に効果的な方法は、1時間に2回の完全換気。対角線上にある窓やドアを開けると効率良く換気ができる。設計上難しい場合は、扇風機やサーキュレーターを斜め上向きに回し、店内の空気を撹拌することで循環を生み出すと良い。もちろん、エアコンや空気清浄機も換気の補助として活躍する。
また席ごとにパーティションで仕切りをしている場合は、エアロゾル感染対策の観点から設置場所の見直しが必要になるかもしれない。これまでは飛沫感染を防ぐために、向かい合せで食事をするテーブルの中央や、隣の客との間仕切りとしてテーブルの横に設置しているケースが多かった。しかし、エアロゾル感染対策という面では、空気の流れを邪魔し空気が滞留することで、逆効果になることもある。エアコンや出入り口、窓の位置などを考慮して空気の流れを確認してほしい。
そのほか、ソーシャルディスタンス確保のため席を間引いた営業は、やはりエアロゾル感染対策として有効だ。改めて、密閉・密集・密接という「3つの密」を避けることを意識したい。
新型コロナウイルスの収束はまだ遠い。今後、日本でもアメリカのようにエアロゾル感染の対策に注力するようになれば、いま行っている頻繁な消毒やマスクの徹底は、過剰な対策ということになるかもしれない。飲食店としては引き続き感染対策を徹底しながら、店と客を守る営業スタイルが求められている。