2022/06/22【新型コロナウイルス:COVID-19】塩野義のコロナ治療飲み薬の実用化は…6月22日に審議、承認なら国産初に道 /塩野義製薬
塩野義製薬が開発している新型コロナウイルス感染症の飲み薬「ゾコーバ」の製造販売について、厚生労働省の専門家部会が22日、新設された「緊急承認制度」に基づく承認の可否を審議する。認められれば、国産初の軽症者向け飲み薬の実用化が近づく。
■経営資源を集中
塩野義は、国内で新型コロナの感染が拡大し始めた2020年3月、飲み薬の研究に着手した。抗ウイルス薬の開発ノウハウを生かし、最短でも5年かかるとされる薬のもとになる化合物の特定に、1年足らずで成功した。その後も「社内のリソース(経営資源)の7、8割を集中」(手代木功社長)させ、今年2月に製造販売の承認申請にこぎ着けた。
呼吸器疾患が専門の長崎大の迎寛教授は「(ゾコーバは)薬の相互作用が少なく、使い勝手が良さそうだ。有効な薬が広まればインフルエンザと同様、開業医が治療することができ、社会活動を抑制する必要もなくなっていく」とみる。
■1000億円規模
塩野義は5月に発表した22年度の業績予想で、ゾコーバとコロナワクチンで少なくとも計1100億円の売り上げを見込んだ。
先行して治療薬を開発した米ファイザーは、飲み薬の売上高が22年だけで約2兆9700億円に上るとの見通しを示している。米メルクも約6750億~7425億円の売り上げを見込んだ。
2社の薬の投与は高齢者や基礎疾患を持つなど、重症化リスクのある人に限られるが、ゾコーバは幅広く処方できる見通しだ。政府とは承認後に100万人分を供給する契約を結び、海外展開も視野に入れる。「ブロックバスター」と呼ばれる年間売上高1000億円規模の大型新薬になる可能性もある。
■流動的
22日の専門家部会で適用が議論される緊急承認制度は、ワクチンや治療薬を迅速に確保するため、最終段階の臨床試験(治験)完了前でも安全性が確認され、有効性が「推定」できれば、暫定的な承認を可能にするものだ。
ゾコーバは、ウイルスの増殖に必要な酵素の働きを妨げる仕組みで、治験では体内のウイルス量の低下が確認されている。一方、疲労感や発熱など12の症状を合わせた「総合的な改善効果」については、統計上の有意な差が見いだせておらず、有効性が「明確でない」との指摘がある。
専門家部会を通過後、別の分科会での審議も必要で、実用化まで流動的な状況は続く。