2017/03/15【人獣共通感染症】口は命の入り口です  ペットとのキスは大丈夫? ペットからうつる感染症リスクとは

【人獣共通感染症】口は命の入り口です  ペットとのキスは大丈夫? ペットからうつる感染症リスクとは

ペットフード協会の平成28年の調査によると、国内で飼育されているイヌの数は約1,000万頭(匹)、ネコの数もまた約1,000万匹だそうです。同じ布団で寝たり、落ちこんでいるときに寄ってきて顔をなめてくれたり……。ペットとの触れ合いは、仕事の疲れを吹き飛ばしてくれますよね。

一方で、スキンシップが過剰になったり、不衛生になったり、その両方だったりすると、ペットから感染症がうつる可能性もゼロではありません。

今回は、ペット(動物)との接触によって「口」からうつる感染症について、お話しします。

ペットからうつる感染症は200種類以上

動物からうつる感染症は、世界保健機構(WHO)が把握しているだけでも200種類以上あります。そのうち日本では、数十種類の感染症に注意しなければならないといわれています。

それって狂犬病でしょう、と思われた方は惜しいです。狂犬病は、1957年から国内のイヌでは発生していません。とはいえ発症すれば100%死亡する恐ろしい病気で、世界では毎年約5万5,000人が亡くなっています。特に途上国で注意してほしい感染症ですね。

では、日常で気をつけたい感染症にはどんなものがあるのでしょうか。

動物から感染する経路は、大きく2つに分かれます。その一つが「皮膚」からの感染です。例えば、「白癬(はくせん)」があります。白癬は、皮膚糸状菌という真菌(カビ)による感染症で、足に感染したものを「足白癬(いわゆる水虫)」と言います。国内では5人に1人が白癬に感染していますが、そのほとんどはペットからうつったわけではありません。ただ、ありふれた菌なので、ペットも感染することはあります。皮膚糸状菌の一種であるミクロスポルム・カニス(イヌ小胞子菌)などに感染したペットは脱毛や赤みが生じ、飼い主に感染すると身体に円状の赤みができます。

もう一つは「口」からの感染で、もっとも多い感染経路です。ここからは、ペットの種類に分けてみていきましょう。

・トリ
オウムやインコなどのうち約5%が、呼吸器系の症状を伴う「オウム病」の病原体(オウム病クラミジア)をもっています。発症すると、発熱など軽いインフルエンザのような症状や、重とくな全身の症状などが出ます。触れた後に手を洗う、口移しでエサをあげない、鳥かごはこまめに掃除して食卓の近くには置かない、などが予防法と言えるでしょう(※4、5、6)。

また、ハトの糞便には「クリプトコッカス症」を引き起こすカビ(クリプトコッカス・ネオフォルマンス)がいます。普通は感染しませんが、免疫力が下がると感染して、肺炎や髄膜炎、皮膚の病変などが生じる可能性があります(※4、5)。ハトを飼っていなくても、駅や公園で野生のハトを見かけることは多いと思います。小さなお子さんがハトに触れたときは、その手を口に入れないように周りの大人の方が気をつけて見ていてあげてください。

・爬虫類
爬虫類の50~90%は、食中毒の原因となるサルモネラ菌をもっています。菌に汚染された食べ物を口にしたり、ペットに触れた手を洗わずにいたりすると、人間も口から感染する危険性があります。過剰なスキンシップは避け、触れた後の手洗いを徹底しましょう。

・イヌ、ネコ
健康なネコのほぼ100%、健康なイヌの約50%の口の中には、パスツレラ菌という口腔常在菌がいます。「パスツレラ症」になると、呼吸器系や皮膚に症状が出ます。イヌやネコに噛(か)まれたり引っかかれたりした場合に、傷から感染する可能性があります。

また、小さなお子さんや65歳以上の方、糖尿病などの病気で抵抗力が落ちている方は、過剰なスキンシップで感染する恐れがないとは言えないので、注意しましょう(※4、5、6)。疲れたビジネスパーソンも要注意ですね。

・ネコ
風邪のような症状が出る「Q熱」という病気があります。ウシ、ヒツジ、ヤギなどの家畜のほか、ネコなどの糞便や尿、体液に病原菌が含まれていることがあり、それらの粉塵を吸い込むと人間も感染するといわれています。いまだ不明な点が多い病気です(※4、5、6)。

また、感染症ではありませんが、ネコのだ液が口から入ると、咳(せき)や鼻水・くしゃみなどのアレルギー症状が出る方がいます。ネコアレルギーの原因物質は、ネコのだ液に多く含まれているからです。口をなめられて、のどの奥がもったりすれば要注意ですね。ネコの居住空間は、掃除を欠かさないようにしましょう。

・ペットからの病気は予防できる
今回紹介した感染症は、衛生面に気をつけていれば防げるものです。ペットに触れた後は手洗いをする、適切に糞便や尿の処理をする、ペットとの居住空間を清潔に保つなど、基本的なことを実践しましょう。万が一症状が現れても、適切な治療を受ければ大丈夫です。感染リスクだけを考えれば、卵、肉、貝類による食中毒の方がよっぽど怖いでしょう。

ただし、日常の中で感染症を防ぐという意識付けは大切です。特に「口」から入る病気は、日々の心がけ一つで予防することができます。まずはペットとの節度ある触れ合いと、触れた後には必ず手を洗うことを意識してみてくださいね。

http://news.mynavi.jp/series/oralcare/006/

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