【食中毒】この時期注意したい食中毒!作り置きに注意!
寄生虫による食中毒の報告例が急増。そしてこれから梅雨の時期で、食中毒に注意したいシーズンです。寄生虫の他に、加熱しても食虫毒を引き起こす菌もあります。その対策について、5月15日(月)の松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で解説しました。
★胃腸にもぐりこむ寄生虫「アニサキス」 …
まず、寄生虫「アニサキス」による食中毒について。食中毒を引き起こすアニサキスは、体長2~3センチの幼虫です。魚介類の内臓に寄生、鮮度が落ちると筋肉に移動しやすくなります。市販の魚などでも、内臓の表面に幼虫がとぐろを巻いているのが見えることがあります。人がそれを生で食べると、幼虫が胃や腸の粘膜の中にもぐり込んで胃腸炎を引き起こします。大体8時間以内に、突然、激しい腹痛や嘔吐が襲います。
アニサキスによる食中毒報告件数は増えていて、2007年は6件でしたが、2016年は20倍以上の124件。
★急増の背景と原因は?
ここ10年ほどの報告急増の理由は、13年から法令改正でアニサキスによる食中毒が、届け出対象に明示されたのが一因とされています。しかし、この数字は氷山の一角と言われ、年間数千例はあるとみられています。また一方で、生の魚介類が、私たち消費者の口に入るまでの経路の多様化があります。例えば産地の業者から直接買い付ける取引などが盛んになっていることも一つです。
東京都の市場に流通する魚を対象に行われたある検査では、90種類のうち、35種類でアニサキスの寄生が確認されたということです。サンマ、サケ、アジ、イカなどが挙げられますが、特に有名なのはサバ。いわゆるサバアレルギーの人を調べたところ、原因はサバではなくアニサキスだったという報告もあります。シメサバによる報告も多く、酢では予防できません。通常の料理で用いる程度のワサビ、しょう油などでもやっつけられません。
★アニサキス対策は?
マイナス20度以下で24時間以上冷凍するか、60℃で1分以上加熱すること。そして、早めに内臓を取り除き、4℃以下の低温で保存するのが重要です。またアニサキスによる食中毒が起きた場合は、消化器内科を受診するようにしてください。アニサキスは人の体の中では1週間程度で死んでしまうので、虫を摘出できなくても対症療法だけで治ります。
★作り置きで増殖するウェルシュ菌
他に、これからの時期に注意したいことは、料理の作り置きです。すべて食べきれればよいのですが、量が多すぎた、というのはよくある話です。料理の作り置きで、気を付けたいのが、「ウェルシュ菌」というものも。ウェルシュ菌とはもともと、人や動物の腸の中や、土壌、下水などにいるものです。体内に大量に取り込まれると、食中毒を引き起こす場合があります。最近では、今年3月、東京・世田谷区の幼稚園で園児ら76人が、作り置きのカレーを食べてウェルシュ菌が原因で、食中毒になりました。
★再加熱しても生き残る?
カレーを作り置きし、常温で保存していると、ウェルシュ菌は増えます。この菌は、熱に強い殻に包まれた形をしているのが特徴で、熱を与えても、生き残ります。100度で1時間以上、加熱しないと、やっつけられないほど。熱に強いです。調理後すぐに食べれば良いのですが、50度以下の常温に戻ると活動を始め、増えていきます。再加熱しても殺菌しきれず、そのまま食べると食中毒を引き起こします。またこの菌は酸素を嫌うため、鍋の中心の空気の触れない部分で、増える性質があります。学校の給食などカレーやシチューを大量に作るところでは、大きなずんどう鍋を使うので、空気に触れない部分も多く増えやすい環境にあります。カレーやシチュー以外にも、筑前や煮込みハンバーグなどでも、増えやすいです。
★ウェルシュ菌対策は?
こうした熱に強い菌の対策としては、作り置きの料理は、常温で放置しないことです。大量に残ってしまった場合は、よくかき混ぜて空気にふれさせながら、冷まして、容器に小分けして冷凍庫などに入れるようにしましょう。
★発生件数の多い「カンピロバクター」
あと、気を付けたいのが、カンピロバクター。厚労省の調べでは、年間300件、患者数2千件ほどで推移しています。飲食店での発生件数が多く、その原因として多いのが、カンピロバクターです。カンピロバクターは、食材にわずかに付いているだけでも食中毒を引き起こします。食中毒症状は1週間ほどで回復し死亡例などはまれですが、中には、手足の麻痺や呼吸困難などを起こす「ギラン・バレー症候群」を発症することがあります。
★BBQ・鉄板焼きの肉料理に注意!
主な原因食材としては、鶏肉や牛レバーなどを生で食べたり、加熱不十分なお肉、2次汚染されたサラダなどです。鶏肉を触った手や、調理器具から他の食材への2次汚染もあります。特に、バーベキューや鉄板焼きなど、外で調理するときに、起きやすいです。去年ゴールデンウィーク中に開催された食肉を調理し、提供するイベントでは、加熱不十分な鶏肉で、500人以上の患者が発生した事例もありました。
★カンピロバクター対策は?
肉は十分加熱し、肉から他の調理器具などを分けることが大事です。また肉を扱った後は、手を洗ってから他の食材を扱い、食肉に触れた調理器具は、使用後は洗うなどが大切ですが、ここで注意が必要なのが鉄板焼き、バーベキューです。中毒菌は、一般的に、75度、1分間加熱すると死滅します。しかし、実験では、バーベキューなどで鳥のもも肉をおよそ14分焼いても、肉の中心温度は60度だったケースもあります。中心温度が70度を超えたのは22分後だったそうです。ぶ厚いお肉を焼くときは要注意。表面を見ると美味しそうに焼けていますが、中は難しいこともあるので、お気をつけください。