【食品衛生】トング需要増、品薄も 感染症対策 使い回し防止
埼玉、群馬両県の系列総菜店「でりしゃす」の客が相次いで腸管出血性大腸菌O157に感染した集団食中毒では、総菜を大皿から取り分けるためのトングが原因となった可能性が指摘されている。使い回しを防ごうと、運営会社はトング約一万本を新たに購入。同様の対策強化の動きが広がるとともにトング需要が高まっており、品薄となるメーカーも出始めた。
「三千から四千はあった在庫がなくなりつつある」。新潟県燕市でトングを中心としたキッチン用品を製造する田辺金具には、でりしゃすの総菜を食べた女児(3つ)の死亡が十三日に明らかになって以降、問屋からの問い合わせが急増した。
担当者は「食中毒対策のため、売り場での交換ペースを早めているようだ」と説明。先端の樹脂部分に抗菌剤を配合したトングも販売する同社には「どんなものでもいいから売ってほしい」との要望もあるという。
死亡女児を含む十一人は、前橋市のでりしゃす六供(ろっく)店で販売された総菜を食べていた。市によると、この店舗は複数の皿でトングが使い回され、定められた「二時間ごとの交換」が守られていなかった疑いがある。
市は、総菜の販売段階で菌が付着した二次汚染の可能性を挙げる一方、トングが原因だったと確定させてはいない。再発防止のため、運営会社フレッシュコーポレーション(群馬県太田市)はトングを使うたびに交換できるよう約一万本を購入、使い回ししないよう促す注意書きも店内に張った。さらに、皿にカバーを付けた。
同様に総菜を量り売りする「オリジン弁当」の運営会社オリジン東秀(東京)はトングを専用台に置き、店員が料理を盛り直すたびに交換しており「以前からの衛生管理の徹底を継続したい」としている。
対策強化の動きは総菜店だけにとどまらない。関東を中心に焼き肉店を展開する安楽亭(さいたま市)は八月、横浜市内の店舗で食事をした客二人がO157に感染したとして営業停止処分を受けた。再発防止のため、生肉と焼いた肉を別のトングで取れるよう、客に渡すトングを増やし、不足分は新たに発注した。
調理道具を扱う店が並ぶ、東京都台東区のかっぱ橋道具街。ある食器店では、バイキング形式のレストランなどからの注文が増えたという。店員は「まな板や手袋といった衛生用品や、料理を盛った大皿にかぶせるふたに関する問い合わせも多い」と話している。
http://www.tokyo-np.co.jp/…/…/201709/CK2017091702000108.html