【ノロウイルス】集団ノロ 長野県公表せず 昨年末 別件は発表、割れる対応 /長野県
長野県上田市菅平高原で昨年末に実施された小学生らを対象にしたスキーキャンプで、ノロウイルスの集団感染が発生した件について、長野県が公表を見送っていることが8日、分かった。県はその後、別の施設で発生した集団感染については公表しており、対応が分かれている。
スキーキャンプは昨年12月26~29日、スポーツ施設などを運営する「東京ドームスポーツ」(東京、鈴木茂之社長)の主催で行われた。東京都内などに在住する6歳~12歳の小学生ら107人とスタッフ16人が参加し、菅平高原のホテルに宿泊。関係者によると、28日午後から夜にかけて児童23人やスタッフ8人が激しい嘔吐(おうと)を繰り返したという。
長野県などの保健所が児童らの便を調査。同県上田保健福祉事務所(上田保健所)は1月18日付で調査結果をとりまとめた。
産経新聞が入手した調査結果によると、同じホテルには同時期に7グループ計391人が宿泊。このうち東京ドームスポーツ主催のキャンプに参加した児童・スタッフ合わせ27人からノロウイルスを検出。他のグループの3人からも検出された。
上田保健所はホテルへの立ち入り調査を実施。「施設の管理状況は良好で、調理従事者の健康状態にも問題はなかった」とし、「(東京ドームスポーツの参加者らの)グループ内で感染が広がった可能性が考えられる」と結論付けた。東京ドームスポーツ側は産経新聞の取材に「吐瀉(としゃ)物や汚物の処理はマニュアルに基づいて対応した」としている。
一方で、長野県は1月13~14日に同県信濃町のホテルに宿泊した男女86人が、ノロウイルスによる食中毒を発症したと同月23日に公表した。菅平高原のケースの公表を見送った理由について、上田保健所は「宿泊先で提供された食事が原因でなかったため」と説明している。
感染症対策に詳しい聖路加国際大公衆衛生大学院の遠藤弘良教授は「正しい情報を確認できなければ風評被害にもつながるため、行政の発表は難しい場合がある」と指摘。ただ、別の公衆衛生学の専門家は「ノロウイルスは強い感染力がある。適切な情報がなければ、同じ宿泊施設を利用する人や家族は二次感染を防ぎようがない」と県の対応を疑問視している。