2020/01/21【新型コロナウイルス】新型ウイルス肺炎 中国 死者6人に 患者は291人 拡大防止を強化 /中国

中国で新型のコロナウイルスによるとみられる肺炎への感染が広がっている問題で、患者の数は291人、死亡した人は2人増えて6人となりました。感染拡大が最も深刻な湖北省の武漢では対策本部が設置されるなど、中国政府は感染の拡大防止を強化する姿勢を示しています。

感染が最も深刻な武漢市の周先旺市長は、21日、中国中央テレビの取材に対し、武漢での死者が6人になったと明らかにしました。

また国家衛生健康委員会は、21日、患者が、武漢を含めた湖北省でさらに72人増えて270人になったほか、湖北省以外では、北京で5人、上海で2人、広東省で14人の感染が確認され、患者は合わせて291人となったと発表しています。

また、医療従事者についても15人の感染が確認されていて、中国政府の専門家チームのトップは、国営メディアの取材に対し「ヒトからヒトへの感染が確認された」と明らかにしました。

専門家チームは、新型肺炎「SARS」のウイルスよりも感染力は強くないとみられるとしていますが、警戒が必要だと強調しています。

こうした中、国営メディアは、感染が深刻な武漢で20日、対策本部が設置され、患者への対応強化とともに感染拡大を抑え込む方針が示されたと伝えました。

今後、武漢では人が大勢集まるイベントを極力中止するほか、現地の旅行会社なども武漢以外へ旅行する団体ツアーを組むのを取りやめるということで、人の往来の管理が強化されています。

中国では今週24日から旧正月の「春節」に合わせた大型連休が始まり、人の往来が活発化するため、当局は感染拡大の防止に取り組む姿勢を示しています。

中国外務省報道官「国際協力を進め対応する」

新型のコロナウイルスによるとみられる肺炎の感染拡大について、中国外務省の耿爽報道官は21日の記者会見で「中国は責任ある態度で、WHOや関係国、関係地域と、いち早く情報を共有してきた」と述べて、関係国や国際機関との情報共有を今後も重視する考えを示しました。

そして、「引き続き国際協力を深め、国際社会と手を取り合って対応していく」と述べ、国際社会と協力して取り組んでいく姿勢を強調しました。

武漢市内の医療機関では

国営の中国中央テレビが伝えた武漢市内の医療機関の映像では、マスクをつけたり、防護服のようなものを着たりしたスタッフの姿が映し出されています。

北京の有力紙「新京報」は、新型のコロナウイルスによるものとみられる肺炎の患者を受け入れている武漢市内の病院では、医師ら以外は患者が入院している病棟に入ることは許されておらず、患者の家族も入れないと伝えています。

香港や上海 株式が下落

中国で、新型のコロナウイルスによるものとみられる肺炎への感染が広がっていることを受け、香港や上海の株式市場は、消費が冷え込むことなどへの懸念から売り注文が広がり、株価が下落しました。

香港の株式市場では、代表的な株価指数の終値が、20日と比べておよそ2.8%下落しました。中国で、新型のコロナウイルスによるものとみられる肺炎への感染が広がっていることが、経済に影響を及ぼすことを懸念して、金融や不動産関連など幅広い銘柄が売られました。さらに、大手格付け会社が20日、香港の債券の信用度を示す格付けを引き下げたことも影響したとみられます。

また、上海の株式市場は、代表的な株価指数の終値が20日に比べておよそ1.4%下落しました。中国では、旧正月の「春節」にあわせた大型連休を前に感染が広がっていることから、旅行やホテル関連などの業種の銘柄が大きく下落し、中には21日の1日で6%余り値下がりした銘柄もありました。

一方、製薬や医療サービスといった業種では株価が上昇しました。

市場関係者は「人の移動が多い時期だけに観光業などへの直接の影響が懸念される。長期化すれば、春節の休暇が明けたあとの工場の操業などにも影響が出かねず、肺炎の感染の広がりを注意して見る必要がある」と話しています。

旅行会社 ホテルなどの無料キャンセル対応も

中国で新型のコロナウイルスによるものとみられる肺炎への感染が広がっていることを受けて、中国最大手の旅行予約サイト「シートリップ」は、各地の空港や港で感染が確認されたり感染が疑われたりした人やその同行者が旅行を取りやめざるをえなくなった場合、航空券を無料でキャンセルできる措置を始めました。

また、21日から今月末までの間、感染が広がっている武漢にあるホテルや観光地のチケットなどについても無料でキャンセルを受け付けるとしています。

中国は今月24日から、旧正月の「春節」にあわせた大型連休が始まりますが、肺炎の感染拡大の影響が旅行や帰省で移動する人たちに広がることが懸念されています。

武漢の日系企業 在宅勤務を指示する会社も

中国で新型のコロナウイルスによるとみられる肺炎の感染が広がっていることを受けて、日本企業も対策を進めています。

JETRO=日本貿易振興機構によりますと、中国の武漢やその周辺の都市には去年10月の時点で156社の日系企業が拠点を置いています。

このうち、ソフトバンクは武漢にいる子会社の社員1人について、在宅勤務にしているということです。

また、自動車部品メーカーのヨロズは今月9日から拠点を置く中国の武漢と広州への出張を見合わせています。

また、中国から帰国した社員に対しては病院で検査を受けるよう指示しているということです。

流通大手のイオンは、武漢にある大型の商業施設など8つの店舗で通常どおり営業を続けていますが、売り場の棚などの消毒を徹底するようにしているほか、従業員の健康に異常がないか確認しているということです。

いずれも武漢に拠点を置く日産自動車とホンダも現地の従業員や出張者に対して手洗いを徹底したりマスクを着用したりして、感染予防に努めるよう呼びかけています。

駐中国大使「在留日本人に丁寧な情報提供努める」

中国で新型のコロナウイルスによるとみられる肺炎の感染が広がっていることについて、中国駐在の横井大使は21日、北京で記者会見し、一層の情報収集に取り組み、中国に在留する日本人に対し、丁寧な情報提供を行うよう努める考えを示しました。

この中で、横井大使は「中国で患者数が増加し、日本を含む第三国での感染例も出ており、大使館としては高い関心を持って情報収集を行っている」と述べました。

そのうえで、大使館としては、これまでにも在留する日本人に対しメールやホームページなどを通じて、最新の情報の提供や注意喚起を行ってきたとしたうえで、「今後も一層の情報収集に取り組むとともに適切な情報提供や注意喚起を行っていく」と強調しました。

大使館によりますと、中国側から得ている情報では、今のところ中国国内での日本人の感染者は確認されていないということです。

北京の空港 マスク姿が増える

中国で、新型のコロナウイルスによるものとみられる肺炎への感染が広がり、メディアが予防を呼びかけていることを受けて、北京の空港では予防のためにマスクをつけていると話す人たちが増えています。

中国では24日から旧正月の「春節」にあわせた大型連休が始まるのを前に、空港や駅ではすでに人の動きが活発になっています。

マスクをしていた20代の女性は「マスクを買いに薬局に行ったら最後の1つでした。みんなとても心配しているので予防のために買っているのだと思います。春節で人の移動が増えるので自分のためと、ほかの人に迷惑をかけないためにマスクをします」と話していました。

また、30代の男性は「気にしている人もいれば気にしていない人もいます。どうやって予防していくかが問題だと思います」と話していました。

上海の薬局 「マスク売り切れ」

中国で新型のコロナウイルスによるとみられる肺炎の感染が相次ぐ中、感染した患者が確認された上海では薬局にマスクを買い求める人が大勢訪れて、一部の店舗では品薄な状況となっています。

このうち、上海市の中心部にある薬局では、数日前からマスクが品薄になっているということで、21日は入り口に「売り切れ」という表示を張り出していました。それでも、店には在庫や入荷の状況などを確認しようと訪れる人が絶えませんでした。

マスクを買いに来た男性は、「これから飛行機に乗って、閉ざされた空間にいることになるので、安全のためにマスクを買いに来ましたが、ありませんでした。1つでも買いたいので別の店を探してみます」と話していました。

また、40代の女性は「家にあるマスクは、もうすぐなくなるし、ウイルスのこともあり、子どももいるので予防のために買いに来ました。手洗いのための消毒液も用意して、旧正月は出かけないようにします」と話していました。

別の女性は、「上海でも患者が出たので、安全、予防のため家族全員マスクをするようにしています」と話していました。

一方、上海の街中では、マスクをした日本人観光客の姿も見られました。

19日、愛知県から友人とともに訪れたという女性は、「旅行を計画したときは患者も出ていなかったので、上海に来ることには抵抗はありませんでしたが、周りからは反対されました。目に見えるものではないので怖いです」と話していました。

SARSの教訓は

2003年に新型肺炎「SARS」の感染が拡大した要因の1つとして、当初、中国政府がWHO=世界保健機関や各国の感染症担当者と、情報を十分に共有しなかったことがあると指摘されています。

重い肺炎を引き起こすSARSは2002年の11月に中国南部の広東省で最初の患者が確認されましたが、中国の保健当局がWHOに報告したのは3か月近くたった翌年、2003年の2月で、この時点で305人が発症し、このうち5人が死亡していたとされています。

その後、2003年3月には旅行者を通じて広がったウイルスによってベトナムや香港の病院で院内感染が起きるなど、感染は拡大し、WHOはSARS=「重症急性呼吸器症候群」と名付けたうえで、「世界規模の健康上の脅威」と位置づけるに至りました。

2003年4月になると、WHOは広東省と香港に対する渡航の延期を勧告するという強い措置に踏み切り、WHOの当時の担当者はこうした措置の背景について感染者の増加に加え、「中国側が肺炎についての情報を提供しなかったことも背景にあった」と述べています。

SARSのウイルスが特定されたのは2003年4月で、患者を隔離するなどの対応が取られた結果、WHOは2003年7月に「終息」を宣言しました。

WHOの報告によりますと、この間、症状が出た人は中国やアジア各地、カナダなどで合わせておよそ8000人以上、最終的に800人近くが死亡し、致死率はおよそ10%に上るとされています。

https://www3.nhk.or.jp/n…/html/20200121/k10012253721000.html

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