デングウイルス Dengue Virus
デング熱(DF)・デング出血熱(DHF)
デング熱はデングウイルスによる感染症で、ネッタイシマカやヒトスジシマカによって感染し、感染症法の4類に分類されています。
病原体について
デング熱はデングウイルスによる感染症でネッタイシマカやヒトスジシマカによって感染します。
感染症法の4類に分類されています。比較的軽症のデング熱と、重症型のデング出血熱とがあります。
デングウイルスは、日本脳炎ウイルスと同じフラビウイルス科に属するウイルスで、蚊(ネッタイシマカAedes Aegypti、ヒトスジシマカAedes Albopictus)によって媒介されます。
4つの血清型(1型、2型、3型、4型)に分類され、たとえば1型にかかった場合、1型に対しては終生免疫ですが、他の血清型に対する交叉防御免疫は数ヶ月で消失し、その後は他の型に感染する可能性があります。この二度目の感染時に、重症化する確率が高くなるといわれています。そのため、型別も含めた実験室内診断が重要です。
デングウイルスはヒト⇒蚊⇒ヒトの感染環を形成し、日本脳炎ウイルスにおけるブタのような増幅動物は存在しません。
特徴
感染の危険がある地域は、アフリカ地域、アメリカ地域、東地中海地域、東南アジア地域、西太平洋地域の熱帯・亜熱帯地域です。日本でも輸入症例だけでなく国内発生例も報告されましたので、国内でも注意が必要です。
感染経路
ウイルスを持っているネッタイシマカやヒトスジシマカなどに刺されることで感染します。(ベクター感染)
ヒトスジシマカは、ヤブ蚊とも呼ばれ、日本にも生息しています。不顕性感染を含めて感染した人を蚊が刺すと、1週間ほどでウイルス量が増えます。その蚊に人が刺されると感染する可能性があります。
人から人へ直接感染することはありません。
潜伏期間と症状
2~14日(通常3~7日)の潜伏期間の後、およそ2~4割の人に38~40℃の発熱で発症し、激しい頭痛、関節痛、筋肉痛、発疹が現れます。肺炎などの呼吸器症状が顕著に現れる感染症ではないので、通常、死に至る危険は少ないですが、関節などの痛みは激しく、英語ではBreak bone feverとも呼ばれています。
通常、3~5日で解熱し、解熱とともに発疹が現れます。発疹は治りかけたときに出現します。
デング熱を起こすウイルスには4種類あると言われています。同じ型のウイルスに再び感染しても免疫によって軽症ですみますが、異なる型に感染すると免疫が過剰に働き重症化することがあります。
重症化したものはデング熱出血熱またはデングショック症候群と呼ばれ、稀に死亡することもあります。感染後の発症率が数10%、そのうち重症化する患者が数%ほど、さらに重症化した患者の中で死に至る人が数%です。
インフルエンザと比べると致死率がかなり低い病気です。
予防
ワクチンやウイルスを標的とした治療法はありません。
蚊が多い地域では虫除け剤の使用を考えるべきです。流行地域では肌の露出に注意します。自覚症状が現れない人も多いので、流行地域から帰国したときには蚊に刺されないように注意しましょう。
インフルエンザと同様に流行地域と流行時期があります。旅行先でのデング熱の情報も見ておきましょう。
治療
血小板が低下し、出血を起こしやすくなるので、通常使用される鎮痛・解熱剤は控えるべきです。
治療には小児にも使われるアセトアミノフェン(海外ではパラセタモールとの名で販売されています)が使用されます。
病院への受診と検査
海外から帰国後、発熱等体調異状がある場合は、早めに近くの医療機関を受診しましょう。
検査ができる医療機関については厚生労働省の「蚊媒介感染症の診療ガイドライン第3版」を参考にして下さい。
医療機関で検査をした結果が陰性または判定不能の場合には、医療機関は最寄りの保健所に相談し、地方衛生研究所もしくは国立感染症研究所(感染研)に検査を依頼することになります。
帰国時にデング熱が疑われ、検疫所で検査の必要があると判断された場合には、検査を受けることができます(検疫法第13条)。
デング熱は感染症法で4類感染症全数届出疾患に分類されるため、診断した医師により直ちに最寄りの保健所に届けられます。