肝炎ウイルス Hepatitis Virus

肝炎ウイルスには、A・B・C・D・E型等、多種類ありますが、分類学的には全く別ものであり、増殖の標的細胞が肝細胞で、肝臓障害を引き起こします。

病原体について

肝炎ウイルスには、A・B・C・D・E型等、多種類ありますが、分類学的には全く別ものであり、増殖の標的細胞が肝細胞で、肝臓障害を引き起こします。

A型肝炎ウイルス HAV(Hepatitis A Virus)

遺伝子     :RNA
エンベロープ  :なし
感染経路    :経口感染。主に糞便からの経口感染。
分類      :ピコルナウイルス科のヘパトウイルス属
感染症法での扱い:4類「A型肝炎」

B型肝炎ウイルス HBV(Hepatitis B Virus)

遺伝子     :DNA
エンベロープ  :あり
感染経路    :血液感染。
分類      :ヘパドナウイルス科(hepadnaviridae)
感染症法での扱い:5類「ウイルス性肝炎」

C型肝炎ウイルス HCV(Hepatitis C Virus)

遺伝子     :RNA
エンベロープ  :あり
感染経路    :血液感染。
分類      :フラビウイルス科のヘパキウイルス属
感染症法での扱い:5類「ウイルス性肝炎」

D型肝炎ウイルス HDV(Hepatitis D Virus)

遺伝子     :RNA
エンベロープ  :あり ※HBVによる
感染経路    :血液感染
分類      :HBVをヘルパーウイルスとする衛星ウイルス
感染症法での扱い:5類「ウイルス性肝炎」

E型肝炎ウイルス HEV(Hepatitis E Virus)

遺伝子     :RNA
エンベロープ  :なし
感染経路    :経口感染。主に糞便から経口感染。
分類      :カリシウイルス科
感染症法での扱い:4類「E型肝炎」

感染経路別による特徴

経口感染

A型肝炎ウイルス HAV

潜伏期間:2~6週間
慢性化 :なし

  • 汚染された飲食物、排他物などから感染します。
  • 潜伏期間は、2~6週間で、初期には風邪のような症状がみられ、黄疸(オウダン)症状へと進行しますが、ほとんどは1~3ヶ月で回復し慢性化はしません(まれに『劇症化』することがあります)。
  • 海外での感染が多く、海外旅行者が感染してくる肝炎の80%。

E型肝炎ウイルス HEV

潜伏期間:2~9週間
慢性化 :なし

  • 汚染された飲食物、排他物などから感染します。
  • 潜伏期間は、2~6週間で、初期には風邪のような症状がみられ、黄疸(オウダン)症状へと進行しますが、ほとんどは1~3ヶ月で回復し慢性化はしません(まれに『劇症化』することがあります)。
  • 日本では非常にまれです。

血液感染

B型肝炎ウイルス HBV

潜伏期間:1~6ヶ月
慢性化 :あり

  • 感染している患者さんの血液、性交渉などからの感染と、母子感染があります。
  • 潜伏期は1~6ヶ月間で、風邪症状から黄疸(オウダン)症状などの一過性の急性肝炎、または劇症化へと進行する場合もあります。
  • B型肝炎は、慢性化は少ないと言われていましたが、最近、性行為によって感染し、慢性化するB型肝炎が日本でも広がっています。(欧米、フィリピンに多い肝炎の一種)

C型肝炎ウイルス HCV

潜伏期間:2~16週間
慢性化 :あり

  • 感染している人の血液、性交渉などから感染します。
  • 潜伏期間は、2~16週間で、約75%が無症状で、多くは検診などで発見されます。
  • 無症状であっても約7~8割は慢性化し、治療をしなければ数十年後に約3割は肝硬変に進行し、さらに肝癌へと進行します。

D型肝炎ウイルス HDV

潜伏期間:1~6ヶ月
慢性化 :あり

  • 単独では発症しないで、B型肝炎ウイルスと同時感染するか、B型肝炎キャリアに感染する。
  • 日本では非常にまれです。

代表的なポイント A型肝炎(HAV)、B型肝炎(HBV)、C型肝炎(HCV)

A型肝炎ウイルス HAV

  • 東南アジアに多く、飲料水から感染。
  • 海外旅行の際には事前のワクチン接種は必要不可欠。
  • アルコール消毒は無効。
  • 経口(糞口)感染なので、飲料水、下水処理施設の完備が重要となり、食品関係者や託児所関係者は、手洗いはもちろんのこと、オムツの換場所や消毒等に注意。

B型肝炎ウイルス HBV

  • 輸血、性行為、出生時、新生児は感染者の唾液等により感染。
  • 世界で約3億人がウイルス保有者で、年間100万人が肝臓障害(肝硬変、肝癌)で死亡。
  • 現在は、組換え技術によりワクチンが生産され、普及している。
  • 滅菌が不十分な器具での入れ墨、ピアス等が感染経路となる可能性もあり。

C型肝炎ウイルス HCV

  • 輸血、性行為、出生時、新生児は感染者の唾液等により感染。
  • 慢性化して肝硬変になりやすく、肝癌になるケースが多い。
  • 変異しやすいのでワクチン開発は難しい。
  • インターフェロンが唯一の治療薬。
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