ヘルペスウイルス・ヒトヘルペスウイルス HumAn Herpes Virus
ヘルペスウイルスは、ヒトでは8種あり、それぞれが宿主であるヒトと共存状態になり、初感染は軽症の傾向ですが、ストレス、体力、免疫力が低下すると暴れだす厄介なウイルスです。
病原体について
ヘルペスウイルスは、ヒトでは8種あり、それぞれが宿主であるヒトと共存状態になり、初感染は軽症の傾向ですが、ストレス、体力、免疫力が低下すると暴れだす厄介なウイルスです。
単純ヘルペスウイルス(HSV-1、2)と水痘ウイルス(HHV-3)はニュ-ロンに潜伏感染しα型に分類されます。
性器ヘルペスはHSV-2のみならず、HSV-1(唾液中に放出される)も口唇性器性行為によると推測される傾向が強まりつつあります。キスで初感染を受けるケ-スも多いです。
出産時に陰部に病巣が存在する場合、新生児ヘルペス感染症が危惧され、神経系での後遺症等、深刻な事態を引き起こす可能性もあります。
特徴と主な症状
単純ヘルペスウイルス1・2型 HSV-1、2
1型は、唾液を介して飛沫または接触により口腔粘膜や性器に伝播します。
2型は、産道感染するほかは、性器接触により伝播する典型的な性感染症起因微生物です。
1型、2型いずれの場合にも感染者は生涯持続感染し神経節にウイルスを保持します。その後、疲労やストレスなど何らかの要因により回帰感染し、口唇ヘルペス(1型)、角膜ヘルペス(1型)、性器ヘルペス(2型)を発症または再発します。
水痘・帯状疱疹ウイルス HHV-3
小児期に感染すると発しん症である水痘です。その後、数十年経過した後、免疫力が低下した中年以上に痛みがともなう辛い疾患である帯状疱しんです。
EBウイルス HHV-4
腫瘍原性をもつ。初感染はおおむね無症状か風邪症状であり、ほぼ全てのヒトが小児期から青年期に感染します。
サイトメガロウイルス HHV-5
妊娠期6ケ月前に感染すると、重症の胎児先天異常を引き起こす。
ヒトヘルペスウイルス6・7型 HHV-6、7
乳幼児における突発性発疹(6型)あるいはそれに類似した疾病(7型)の原因ウイルスで、主に既感染の健常成人の唾液を介して伝播すると考えられています。
カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス HHV-8
エイズのカポジ肉腫原因ウイルス。
精液中にも検出されることから性行為感染も伝播経路のひとつと推測されています。
Bウイルス
サルを宿主とするヘルペスウイルス。
サルのヘルペスBウイルスは動物園、研究施設で霊長類を扱う職員には危険なウイルス。
詳細
HSVによる皮膚感染は初感染、再発感染は火傷や湿しんと合併すると全身皮膚感染になり危険なものとなります。
αヘルペスウイルスのHHV-1・2・3はアシクロビル(抗ウイルス剤)に感受性があります。感染阻止は不可能であるため、潜伏感染は予防できません。あくまでも疾患の進行抑制と症状の軽減化に有効です。HHV-3は小児期に感染すると発しん症である水痘(バリセラ、チッキンポックス)になり、その後、数十年経過した後、免疫力が低下した中年以上に痛みがともなう辛い疾患である帯状疱疹になります。
また妊娠中の水痘感染は非常に危険で重症になりやすく、胎児にも影響が及び、死産や新生児が全身感染症で死亡する可能性もあります。帯状疱しんから回復したヒトの免疫グロブリンを水痘接触3日以内の妊婦、新生児に投与すれば効果的と報告されています。HHV-5・6・7はβヘルペスに分類されています。
サイトメガロウイルス(CMV)であるHHV-5は、小児期での感染は無症候ですが、妊娠期6ケ月前に感染すると、重症の胎児先天異常を引き起こす可能性が高いです。
免疫機能が低下した入院中の易感染者は発症し、死に至るウイルスとして注意が必要です。一度感染すると終生、断続的に活性化が起き、全身の分泌体液にウイルスが排出されます。エイズ患者、臓器移植患者(免疫抑制剤使用)の最も多い死因になります。
HHV-6リンパ球中に存続するがA・Bに分類されます。Bは脳のグリア細胞に潜伏感染すると推測されています。再活性化すると、熱性痙攣を引き起こす場合もありますが、6・7型についての強い病原性は未解明です。
HHV-4(EBウイルス)とHHV-8はγヘルペスウイルスに分類され、腫瘍原性をもっています。EBウイルスの初感染はおおむね無症状か風邪症状であり、ほぼ全てのヒトが小児期から青年期に感染します。鼻咽頭、唾液腺、耳下腺上皮細胞で増殖し、末梢の免疫担当B細胞に生涯にわたり潜伏感染します。臓器移植、エイズ等、免疫機能が低下すると伝染性単核症等、慢性活動性感染症になります。
HHV-8はエイズのカポジ肉腫原因ウイルスです。ヘルペスウイルスは移植医療の分野において、最も困難を要するウイルスです。医療現場では、接触感染を防ぐといった一般的な対策が求められます。
ヒトヘルペスとは別に、サルのヘルペスBウイルスは動物園、研究施設で霊長類を扱う職員には危険なウイルスです。ヒトからヒトへの感染はないが、サルの体液、咬傷による感染で動物取扱い者に上向性の麻痺、脳炎が多数発生しました。サルの尿が女性研究者の目に入り脳炎により死亡した報告もあります。