免疫・健康の管理について
- 2017/7/3
- 感染症ガイド
免疫・健康の管理について
免疫・健康を管理することは、感染管理を行う上で非常に重要です。
もし感染してしまった場合でも発病させない、重症化させない為にも、免疫システムを理解しましょう。
1)免疫システムについて
スポーツ選手ほど、風邪を引きやすいという統計があります。
一般人よりも体力のあるスポーツ選手が風邪を引くメカニズムは、下記の図を参照してください。
※あくまでイメージです。
人には、2本の充電池のような体力ゲージがあり、動いたり、話したりする「行動体力」と身体から病原体を排除する「防衛体力」があり、一般的に免疫力や抵抗力とは「防衛体力」のことを指しています。
防衛体力は体が自然と活用している体力であり、激しい運動や寝不足・過度なストレスが続くと行動体力が低下し、完全にゼロになる前に防衛体力から体力を補充します。
そのことにより、防衛体力が低下し、免疫力や抵抗力が低下します。このような状況になると、日和見感染といって、体内にいる常在菌によって風邪や様々な感染症になることがあります。ですので、スポーツ選手が激しいトレーニングや試合などにより行動体力を著しく低下させてしまうことで、一般人よりも風邪を引きやすくなるのです。
2)体を感染症から守るしくみ
鼻とのど
侵入してきた細菌をくしゃみや咳で外に出します。
涙
病原体を洗い流すとともに、リゾチームという成分が病原体を殺します。
皮膚の中
何重もの層で出来ている皮膚は病原体が入りにくい構造になっており、角質層のいわゆるアカが皮膚から離れる時に病原体も一緒に落ちます。
気管
病原体の侵入を防ぐ物質を出します。粘液がキャッチしたホコリの粒子や病原体を咳や痰として外に出します。
胃酸
正常な胃は強い酸性で、口から侵入してきた病原体を胃酸により死滅させます。
腸
腸の中の善玉菌が外から入ってきた有害な悪玉菌を排除します。
3)自然免疫と獲得免疫について
人体にはもともと感染症から守るたくさんのバリアがあります。
そのバリアを突破した病原体を排除する働きが「免疫」で、「自然免疫」と「獲得免疫」があります。自然免疫は生まれつき体が持っている防御システムで、獲得免疫は「抗原(病原体)」に感染して身につくものです。
自然免疫が退治出来なかった時に働くシステムで、「抗原」ごとに違う「抗体」の作り方を記憶し、同じ病原体が再度侵入した場合、その抗体を作って2度と同じ病気を発症しないようにします。
自然免疫
体に侵入した病原体と最初に闘います。病原体を見つけては攻撃してひたすら退治します。
獲得免疫
自然免疫をも突破した強敵の病原体と闘います。
直接攻撃をするキラーT細胞と抗体を作って闘うB細胞が活躍します。抗体は特定の病原体だけに効果のある特殊な武器で、頼りがいのある賢い味方です。
4)予防接種・ワクチンと薬について
ワクチン
感染症にかからない手段としてワクチンがあります。
ワクチンは、病原体の毒性を弱めたものや、毒性をなくしたものを使って、武器となる「抗体」の作り方を体に覚えさせ、強い病原体が侵入しても大丈夫な体にするものです。
感染症を発症させないためには、ワクチンを接種することが最も効果的な方法で、ほとんどの日本人は乳幼児のころ、はしか、風疹、おたふくかぜ、水疱瘡などの代表的なワクチンを接種しています。
薬「くすり」による化学療法
病原体を直接攻撃して、殺したり増殖を止めたりする「薬」による治療法が化学療法です。
カビや細菌自身が作る「抗生物質」と、化学合成で作るものがあります。エイズなど治療不可能と思われた感染症に効く薬が登場し、治療方法は大きく発展しました。ただし化学療法には、何度も同じ薬を使うと病原体が耐性を持つようになり、薬が効かなくなるという大きな問題があるため、適正な使用方法が推奨されております。
5)職員を取り巻く環境
職員は、外部との接触の機会が多いことから、事業所や施設に病原体を持ち込む可能性が高いことを認識する必要があります。
特に、医療機関や社会福祉施設の職員等は、日々の業務において、患者や入所者と密接に接触する機会が多く、患者や入所者間の病原体の媒介者となるおそれが高いことから、日常からの健康管理が重要となります。
また、近年では調理従事者はノロウイルスなどに感染している状態で調理に従事すると大規模な食中毒事故へとつながる事故が発生しております。
6)就業制限の必要性
職員が感染症の症状を呈した場合には、職場の実情を踏まえた上で、症状が改善するまで就業を停止することを検討する必要があります。
感染している場合の就業は、病原体を職場内に持ち込むリスクが極めて高いため、完治するまで休業させることは、感染管理を行う上で、感染源対策や感染経路の遮断に有効な方法といえます。就業の停止は就業規則との整合をはかるように留意する必要があります。
また、職員の家族が感染症に感染している場合は、職員自身も自己の健康に気を配り、症状が出たら早めに上長に相談し、指示を仰ぐなどの対応が重要です。
7)インフルエンザの感染から完治までのイメージ
※あくまでイメージです。
8)免疫細胞について
免疫細胞には、それぞれ役割があり発熱もマクロファージが警報を出すことが要因です。免疫細胞を活発化させる生活習慣も重要です。
免疫細胞の役割イメージ
好中球
弱い先発隊。
体内に侵入した病原微生物を食べます。
マクロファージ
弱い先発隊。
体に警告を出します。※インターフェロン
ヘルパーT細胞
分析官。
好中球とマクロファージが食べた病原微生物を基に分析をして、抗体の設計図を作ります。
B細胞
武器のスペシャリスト。
ヘルパーT細胞からの指示で抗体を作り、抗体を効果的に使用して病原微生物を殲滅します。※インフルエンザでは、抗体が出来るまでに3~4日間かかります。
キラーT細胞
殺し屋。
病原微生物が増殖している細胞ごと殺します。
サプレッサーT細胞
勝利宣言。
免疫細胞側の勝利宣言をし、攻撃をやめ、完治となります。
※あくまでイメージです。