高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)について
トリからヒトへ ポイントは受容体の違いだった
なぜトリからヒトへと感染するかについては、近年ヒトの上気道にはヒト型ウイルスの受容体(シアル酸のα2-6結合)のみが存在しますが、肺胞ではトリ型ウイルスの受容体(シアル酸のα2-3結合)も存在することが明らかになりました。
よって死んだニワトリから濃厚なウイルスを吸い込むと、一部は直接肺に到達し、重症化すると理解できます。
しかし、上気道では増殖できないため、飛沫として排出されにくく、ヒトの間で飛沫感染が起こりにくいと推定されています。養鶏場で感染が確認された場合、ニワトリを全て処分するのは、自然界でヒトへの順化を排除するための最良の処置と判断されているためです。
インフルエンザウイルスの遺伝子交雑、点突然変異等によるヒトへの馴化、高病原性化を食い止める研究は人類の課題でもあります。
一般的にインフルエンザウイルスはヒトでは上・下気道粘膜の線毛円柱上皮細胞、トリでは腸管で増殖し、体内(血液中)では増殖(ウイルス血症:Viremia)しません。
子どもが感染しやすい脳症の場合においても、ウイルス血症は起こらず、脳内でウイルスは検出されないことから、強烈な炎症反応(サイトカインストーム)によるサイトカイン病とも言われています。
インフルエンザは飛沫感染(感染者から1~2mが感染拡大範囲)で感染力が極めて強いため、医療環境では厳密な感染管理が要求されています。
医療福祉現場でのインフルエンザ感染症対策は、他の感染症対策を講ずる上で最もよい教材と言われております。
現在、話題になっている新型の高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5Nl)は、中国(香港を含む)、ベトナム、タイ、インドネシアではトリから濃厚感染して2003~2007年1月末までに270人が感染し、164人が死亡しています。
また、近年ではヒトからヒトへの感染は見受けられ、流行した場合には6,200万人以上の死者がでると推定されています。