ロタウイルス Rota Virus


ロタウイルスによる非常に感染力の強い病気で、免疫のない小児では6ヶ月~2歳くらいまでに必ずと言っていいほど経験する病気です。

病原体について

ロタウイルスはレオウイルス科に属し、ロタウイルスは、A、B、C、D、E、F、Gの7つの血清群に分類され、A・B・Cの3つの群が人間に感染しますが、人間のロタウイルスの大部分は、A群に属します。
ウイルス粒子内に11個の2重鎖RNA分節を持った小児下痢症(胃腸炎)の主要な原因ウイルスです。

ロタウイルスは、電子顕微鏡でみると、車輪のような形に見えます。ラテン語で、ロタ(rota)とは、「車輪」を意味して、ロタウイルスの名は、この電子顕微鏡での外観に由来します。

特徴

ロタウイルスによる非常に感染力の強い病気で、免疫のない小児では6ヶ月~2歳くらいまでに必ずと言っていいほど経験する病気です。

通常1歳を中心に流行がみられますが、保育所、幼稚園、小学校などの小児や、病院、老人ホーム、福祉施設などの成人でも集団発生がみられることがあります。主に冬季(11月から4月まで)に流行するので、冬季下痢症とも呼ばれています。

ロタウイルスは、体外の環境下でも、非常に安定です。消毒が行われないと、数週間から数ヶ月間、体外で生存することもあります。ロタウイルスで汚染された食物を食べることにより食中毒を起こす可能性もあります。

10~100個程度でもウイルスが口から入れば感染すると考えられていますが、ロタウイルスによる下痢便1mℓ中に1億から100億程度のウイルスが含まれていることがあります。

激しい下痢(白色または黄白色便)の原因は、ウイルスの非構造蛋白(NSP4)が細菌の腸管毒(enterotoxin)と似た働きを持っているためとされています。

神経疾患である脳炎、乳児痙攣、熱性痙攣がロタウイルスと関連しているとの報告もあります。

ちなみに血液、脳脊髄液からウイルスが検出されている因果関係は立証されていません。

小児下痢症(特に生後6ケ月から2歳)の大部分はA群です。発展途上国では例年、100万人の子供が死亡しています。

医療施設、託児所、乳児院等における院内感染も多々見受けられます。冬季(日本、米国や温帯の国では11月から4月)に流行する経口感染が主であるが、小児の症例では呼吸器症例も報告されているため、呼吸器感染も否定できません。

新生児の感染防御効果は母親からの初乳に含まれるIga抗体が有効です。母乳抗体は成長するにつれて急速に低下しますが、生後数ヶ月で感染しても不顕性感染になります。再感染は起こします初感染より軽症です。

ウシを免疫とし、初乳または牛乳を飲ませて病院内交差感染防止、及び、治療に役立てようという試みもあります。

ワクチンについては、1998年に米国で複数の型抗原を持つ経口ワクチンが承認されたが腸重積(腸閉塞)を起こす可能性があり中止されました。その後、改良生ワクチンが2006年2月3日に認可されました。米国では2007年から定期予防接種に加えられました。米国では5歳まで大部分の子供が感染し、5人中4人が発症、70人中1人が入院、20万人中1人が死亡すると推計されています。近年では、世界中で毎年61万人程度の乳幼児が死亡しています。

家族内感染、院内感染、施設内(乳児院、学校、老人ホ~ム)における集団感染がしばしばみられます。医療現場での日和見感染の1つですが、骨髄移植後の感染報告が多いようです。

手洗い、次亜塩素酸ナトリウム等による消毒、オムツの適切な処置等を厳守すれば、感染を予防することが可能です。

感染経路

1)経口感染

人の糞便などに含まれるロタウイルスが、下水を経て川から海に運ばれ、カキなどの二枚貝の内臓に蓄積されます。それを、十分に加熱しないで食べると感染します。

2)接触感染

ロタウイルスに感染した人が、十分に手洗いを行わずウイルスが手についたまま調理をすると、食品が汚染され、その食品を食べた人が感染します。

3)空気感染

ロタウイルスに感染した人の糞便や嘔吐物を処理した後、不適切な処理で残ったウイルスが、乾燥してホコリと一緒に吸い込むことで感染します。

ウイルスは環境中でも安定なので、汚染された水や食物を介して、あるいは汚染された物の表面(ドアノブ、手すり等)を触った手などから口に入り感染します。患者の便1g中には10~100億個ものウイルスが排出されます。

ロタウイルスは感染力が非常に強く、10個以下のウイルスで感染が起こります。このため、患者の便中のウイルスがなんらかの形でほかの人の口に入って感染します。ロタウイルスは約1週間便中に排泄されると言われています。

潜伏期間と主な症状

1)3~8日続く水様の下痢と嘔吐
2)39℃以上の発熱や腹痛
3)せきや鼻水

ロタウイルスによる感染性胃腸炎の場合、潜伏期間は1~3日間です。
3~8日続く水様の下痢と嘔吐が特徴です。嘔吐から始まることがしばしばあります。摂39度以上の発熱や腹痛がしばしばおこります。発熱・嘔吐から始まり、24~48時間後に頻回の水様の下痢へと続く場合もあります。咳や鼻水が見られる場合もあります。また、中には、ロタウイルスに感染しても何の症状も示さない子どももいます。症状がなくても便中にロタウイルスが排出されていることがあります。

治ったあとの免疫は不完全で、またかかることもありますが、2度目にかかる場合は、重症でないのが通常です。
生後3ヶ月以降の初回の感染が一番重症となりやすいです。生後3ヶ月未満の赤ちゃんが感染する率は比較的低いです。胎児のときに母親から受け継いだ抗体や母乳による免疫効果が考えられます。

ロタウイルスよる感染性胃腸炎に初めて感染して治った後には、38%のこどもは2度目のロタウイルスよる感染から防御されます。77%のこどもはロタウイルスよる胃腸炎の発病から防御されます。87%のこどもはロタウイルスよる重症の胃腸炎の発病から防御されます。

患者から周囲の人たちへの主な感染の仕方は、患者の便の中に出てきたロタウイルスが、手などによって運ばれて、周囲の人たちの口の中に入ることによります。
しかし、気道の分泌物や他の体液にもロタウイルスが少量ながらも出て来ることが報告されていて、鼻水等による感染の可能性もあります。ロタウイルスは体外の環境下でも安定であるため、ロタウイルスにより汚染された水や食物を飲食したり、ロタウイルスにより汚染されたおもちゃをしゃぶったりしても、感染します。口から入ったロタウイルスは、小腸の粘膜で増殖します。小腸における水分吸収作用を損ない、下痢を起こします。

ロタウイルスによる感染性胃腸炎の場合、下痢症状が出る前から、下痢症状が終わって2~3日後までは、患者の周囲の人たちが感染する可能性があります。下痢症状が出る2日前から、下痢症状発症の10日後までの間、便中にロタウイルスが検出されることがあります。

ロタウイルスによる感染性胃腸炎の場合、通常は、免疫機能が低下していない限り、入院治療にいたることは、少ないです。
脱水を防ぐために、水分を口からよく補給することが大切です。ロタウイルスによる感染性胃腸炎の場合、脱水のため点滴が必要になり40人に1人の割合でこどもが入院しています。

対策としては、よく手を洗うことを習慣付けることが大切です。
自分のトイレの後、こどものトイレを手伝った後、こどものオムツを替えた後、調理・配膳・食事・おやつの前等には、よく手を洗いましょう。また、こどもが帰宅したときや、オムツ替え・トイレの後、食事・おやつの前等には、小さなこどもたちが手を洗うのを手伝ってあげましょう。

手を洗った後、同じタオルを何回も使うことは、好ましくありません。タオルが一度病原体に汚染されてしまうと、かえってタオルが感染源となり、タオルでふくことが感染のきっかけとなってしまうことがあります。できれば、1回限りで使い捨ての紙タオルが望ましいです。

消毒について

ロタウイルスに対する消毒については、下記が有効です。

  1. 70%以上のエタノール
  2. 0.02%(200PPM)次亜塩素酸ナトリウム
  3. 2%グルタルアルデヒド
  4. pH3.0未満の強酸
  5. 摂氏50度以上30分の加熱
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