SARSコロナィルス SARS-Corona Virus
重症急性呼吸器症候群(SARS)
Severe Acute Respiratory Syndrome


重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因ウイルスで、コロナウイルスの突然変異によるものです。

病原体について

コロナウイルスの突然変異によるものです。

プラスチックの表面で乾燥後48時間まで生存します。

香港での研究では、尿中では、少なくとも24時間、便中では、少なくとも2日間生存することが判明しました。なお、下痢便中では4日間まで生存しました。

特徴 大流行した事例

SARSウイルスは2002年の11月頃より中国広東省を基点とし、香港、ベトナム、カナダ、台湾、アメリカ、ヨーロッパに広がりました。

感染初期においては、香港でインフルエンザH5N1(高病原性トリインフルエンザ)が見つかっており、WHO世界保健機構は当初、新型インフルエンザと考えました。

2003年4月に、RNA遺伝子を持つ直径80nm程度のコロナウイルス(粒子のまわりに太陽のコロナ様形態)が、サルへの感染実験でコッホの4原則に適合することが判明しました。

感染経路について

感染経路は飛沫感染と認識されていますが、飛沫核感染(空気感染)、接触感染も否定できません。

SARSウイルスは腸管でも増殖し、糞便中にも大量のウイルスが排出されます。
香港の高級マンションであるアモイガーデンでの多くの感者がでた原因は排水管のUトラップが乾燥していたことと、換気扇使用時に、排水管からのウイルスが乾燥飛沫となって室内に広がり、上昇気流にのって空気伝播されたといわれています。

国内で問題になっているノロウイルスも空気感染により広がるという点において類似しています。

潜伏期間と主な症状

潜伏期間は2~7日ですが、多くは3~5日です。最長で10日と考えられる場合もあります。

重症急性呼吸器症候群(SARS)は、38度以上の発熱で発病します。

悪寒や筋肉のこわばり、また、頭痛、気分不快、筋肉痛を伴うことがあります。発熱時に軽い呼吸器症状が見られる例もあります。発疹や神経学的所見、胃腸症状は通常見られません。しかし、発熱とともに下痢が見られた例もあります。

発熱による発病から3~7日後、下気道の呼吸器症状が始まります。痰が少ない、乾いた咳、息切れや呼吸困難です。

低酸素血症となる場合もあります。
患者の10~20%では、呼吸器症状は重症で、人工呼吸器による治療が必要となります。胸部X線検査では肺炎の所見が認められることがあります。しかし、一方で呼吸器症状がまったく見られず、軽い発熱のみで全快となる患者もいます。

致死率は、年齢階層により違いがみられ高齢者の方が患者の致死率は高いです。(平均14~15%、45~64歳で15%、65歳以上で50%以上)

重症急性呼吸器症候群(SARS)は、インフルエンザのような爆発的な感染の広がりは示しません。
患者の診療にあたった病院の医療従事者あるいは患者の家族に、患者の発生が多く見られました。人から人への感染は、密接な接触が必要だと考えられています。感染者の呼吸器からの飛沫との密接な接触あるいは感染者の体からの分泌物との密接な接触が、感染のために重要な役割を果たしているのではないかと考えられています。

重症急性呼吸器症候群(SARS)に対する特効薬は、見つかっていません。症状に応じた対症療法中心になります。対症療法中心で重症から回復した例が増えています。香港では、ステロイドと抗ウイルス剤Ribavirinとを使った治療法が試みられています。

抱えている問題について

問題は世界中の研究所に、研究材料としてSARSウイルスがフリーザーに保管されていることです。流行の終息後、シンガポール、台湾では取扱い不備により研究者本人が感染する事故が起こりました。

2004年には北京の国立ウイルス研究所の実験室で感染事故が起こり、計9人が感染しました。そのうち、感染者を看病した母親(医師)が死亡しています。しかし、研究所ではSARSウイルスを用いた実験を行っておらず、感染した原因は究明されていません。

今後の対策

  • 上記の問題は病原性微生物を取扱う実践的な教育訓練(バイオセーフティ教育)の重要性を意味しています。より広義にとらえれば、感染症リスク管理教育を医療従事者に普及せる必要があります。臨床検査技師が検査業務により、結核に感染し、死亡した例もあります。
  • 未解明な点も多く残されているがSARSウイルスは患者から2m以上の距離を保つと感染しにくく、飛沫感染であれば、感染者がマスクをする効果は大きいとされております。
  • SARSで最も注目すべきことは、多くの医療従事者が感染し、新たな感染源となり、病気を拡大させてしまい台湾では多くの医療従事者が職場放棄をする状況に陥ってしまいました。SARSの世界的な再流行は無いかもしれません。しかし、病院を中心に医療従事者経由で感染症が拡大した経緯は事実であり、何を教訓とすべきか、詳細に検証する意義は大きいです。
  • 経済情報活動がグローバル化しているため、病原性の強いインフルエンザが出現すると不安と恐怖が世界中を駆け巡り、市民生活や経済状況への影響は計り知れません。
  • また、2012年9月に中東でSARSに似た新型コロナウイルスが確認されMERSコロナウイルスとしてWHO世界保健機構も大規模感染の恐れについて注意を呼びかけております。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 2017-8-7

    学術雑誌「医療看護環境学」を創刊致しました!

    学術雑誌「医療看護環境学」を創刊致しました! どうぞご利用ください! 医療看護環境学の目的 …
  2. 2021-4-1

    感染症ガイドMAP

    様々な感染症情報のガイドMAPです 下記のガイドを参考に、情報をお調べください。 感染症.com…
  3. 2021-4-1

    感染症.comのご利用ガイドMAP

    一緒に問題を解決しましょう! お客様の勇気ある一歩を、感染症.comは応援致します! 当サイトを…
  4. 2022-9-1

    感染対策シニアアドバイザー2022年改訂版のお知らせ

    感染対策シニアアドバイザーを2022年版に改訂しました! 感染対策の最前線で働く職員の…
  5. 2022-9-1

    感染対策アドバイザー2022年改訂版のお知らせ

    感染対策アドバイザーを2022年版に改訂しました! 一般企業の職員でも基礎から学べ、実…

おすすめ記事

ページ上部へ戻る